2025.06.06

インプラントのリスクとは?後悔しないためのリスク回避法

コラム写真

インプラント治療はとても優れた治療法であり、失った歯の周囲の歯を削ることなく回復できるうえに、かなり強く噛むことができるようになります。
人間にとって「噛む」という行為は、健康を保つ上で非常に重要な運動です。
たった1本の歯を失うだけでも、歯全体のバランスが崩れ、それに伴い身体全体のバランスまで乱れてしまうことがあります。
こうしたバランスの崩れを防ぐためにも、歯を失った場合には、できるだけ早く失った歯の代わりとなる補綴物(ほてつぶつ)が必要となります。

その際に、現在最も優れた治療法とされているのがインプラント治療です。
しかしながら、インプラント治療にはいくつかの条件があります。
まず、身体全体の健康状態が良好であること、そして歯槽骨の量が十分にあることが非常に重要です。
また、インプラント治療は健康保険が適用されず、自由診療となるため、費用面がネックになることもあります。

インプラントのリスク

インプラント治療におけるリスクとして挙げられるのは、埋入手術が必要になる点です。
骨の量が不足している場合や少ない場合には、神経や血管などを損傷するリスクが高まってきます。また、上顎には「上顎洞」という空洞があり、骨が少ないとその部位でのインプラント治療が難しくなってきます。

骨の量が少なく、インプラント治療が困難な場合には、骨造成の手術を追加することで、インプラント治療を行えるようになることもあります。

炎症や感染症

インプラントの上顎洞への突き抜け

インプラント治療後に、インプラント周囲の感染や炎症などが原因で、インプラントが抜けてしまったり、機能しなくなったりしてしまうことがあります。そのため、感染や炎症には十分注意することが大切です。

インプラントの周囲に炎症が起こり、骨が溶けていくことでインプラントがぐらつき、最終的に抜けてしまう病気ですが、炎症の初期段階で適切な治療を行えば改善できることもあります。したがって、定期的にチェックを受けることが重要です。

金属アレルギー

歯科インプラントで埋入される人工歯根は、主にチタン製であり、金属アレルギーが起こりにくいとされている金属です。しかし、心配な方はインプラント埋入前に皮膚科などでチタンアレルギー検査を受けて、アレルギーの有無を確認することができます。

チタンは、整形外科領域でも骨折時のネジなどに使用されており、以前から一般的に人体に使用されてきた金属ですので、あまり心配はいらないと考えられます。

インプラントと骨がうまく結合しない

インプラントを埋入しても、稀に骨がうまく形成されない場合があります。このような場合は、身体の状態などが影響していると考えられます。
たとえば、骨粗しょう症や代謝不良といった健康状態の不良や、喫煙などによる組織への影響によって、インプラント埋入部位に骨ができず、インプラントが抜けてしまうことがあります。

このような場合でも、全身状態をきちんと改善したり、禁煙を行ったりすることで、インプラントの再手術が可能になることもあります。

上顎洞への突き抜け

インプラントの上顎洞への突き抜け

インプラント埋入時に骨が少ない場合、上顎洞にインプラント体を穿孔させ、その周囲に人工の骨を入れてインプラントを成功させる手術があります。
このような場合には、事前に患者さんへきちんと説明を行い、手術を実施いたしますので、術後の注意事項を守っていただければ、特に問題が起こることは少ないです。

しかしながら、経験が不足している術者の場合、予定している深さよりも深く削ってしまい、意図せず上顎洞を穿孔してしまうこともあるかもしれません。このような場合でも、穿孔が1ミリ以下であれば大きな問題にはなりませんが、深く穿孔してしまった場合には、上顎洞内のシュナイダー膜を破ってしまう可能性があります。

このような場合には、破れた箇所の閉鎖処置が必要となります。膜が破れてしまうと、鼻をかんだときに圧力が逃げたり、感染の恐れが出てきたりするため、注意が必要です。

上の歯のインプラント治療は難しいですか?

神経や血管の損傷

インプラントを埋入する際には、大切な神経や血管を傷つけないように手術を計画し、インプラント体の長さや太さを一人ひとりの部位に合わせて設計し、より安全にインプラントを埋入できるようにいたします。そして、しっかり噛めるようにするだけでなく、審美的にも良好な結果が得られるように、術式を考慮して施術を行っております。
もちろん、一次元的な画像だけでなく、三次元画像も用いて何度も確認を行っております。

万が一、インプラント埋入時に神経や血管を損傷してしまった場合には、大学病院歯科への紹介ができる連携体制を、当医院では20年以上にわたり整えておりますが、これまでにそのような事例は一度も発生しておりません。
やはり、術前の審査・診断と、無理のない手術計画が非常に重要であると考えております。

見た目の問題が生じる

インプラントを前歯に行う場合は、非常に難易度が高くなります。まず、日本人(アジア人)の前歯部は骨が薄くて少ないため、インプラントを埋入できない場合も多くあります。インプラントが可能な場合でも、薄くて少ない骨の中に何とか埋入できるというケースが多いです。

さらに、骨だけでなく歯ぐきも薄いため、金属の色が透けて見えてしまう場合があります。そのため、設計の段階でなるべく金属色が出ないように配慮し、実際の手術を行います。

個人差が大きいため、術前にある程度の説明を行いますが、実際に透けて見える可能性がある場合には、審美性を損なわないように、あらかじめ少し深めにインプラント体を埋入する設計をし、手術を実施いたします。

糖尿病

インプラントを埋入しても、きちんと骨ができにくい要因として、糖尿病などによる血糖値の上昇があげられます。
糖尿病の初期段階であれば、インプラントを埋入して成功させることは可能ですが、血糖値のコントロールができていない場合は、かなりリスクが高くなってまいります。透析などを行っている場合には重症度も上がり、インプラントの埋入が難しくなることもあります。

もし糖尿病である場合には、内科などでしっかりと治療を行い、主治医の指示のもとであれば、インプラントが可能な場合もございますので、担当の歯科医師にご相談ください。

老後のメンテナンスの難しさ

老後のメンテナンスは、かなり大変になってきます。歯もインプラントも、きちんとご自身で口腔ケアができ、なおかつ歯科クリニックにて定期的にメンテナンスを受けることで、はじめて長く使用することが可能になります。

しかしながら、人間は年齢を重ねると、認知症を発症したり、身体の動きが悪くなったりしやすくなります。これにより口腔内の状態も悪化しやすくなり、歯周病やインプラント周囲炎、さらには誤嚥性肺炎などのリスクが高くなってきます。そのため、介助者などによる口腔内ケアや、そのための指導がとても重要になります。

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インプラントのリスク回避のためにできること

インプラント埋入時のリスク回避のためにできることといえば、まずは健康な体を維持することです。歯は少しずつすり減ってなくなっていくものですので、「歯は消耗品」と考えて、しっかり手入れをすることで長持ちさせることができます。
反対に、お手入れを怠れば悪くなるスピードは非常に早くなり、歯を失った際の骨の状態も悪化してしまいます。その結果、インプラントの埋入条件が厳しくなり、手術も難しくなるため、リスクが増大します。

やはり、歯があるうちからの丁寧なケアが、インプラント治療におけるリスク回避の大きなポイントになります。

しっかりとした治療計画を立てる

インプラント埋入時には、健康状態がとても大切です。持病の状態が安定しているかどうかを主治医と連携して確認することや、レントゲンやCT検査で血管や神経の位置をしっかり把握すること、術者の技術向上も安全な手術のために非常に重要です。

しかし、それだけでなく、受ける患者さん自身の健康に対する認識や口腔内の状態の理解、そして健康改善への取り組みも非常に重要になります。

経験と技術のある歯科医師を選ぶ

インプラント埋入は、全身状態の把握や一人ひとりの生活習慣、食いしばりなどの悪習癖、解剖学的状態の把握、骨の状態など、さまざまな要因を考慮し、一人ひとりに合った治療法を立案することが重要です。
安全に、気持ちよく摂食や咀嚼機能を改善し、審美的にも精神的にも健康状態をより良い方向へ導く治療でなくてはなりません。

また、老後も踏まえてインプラントのスリーピングなどの方法について、患者様や介護者が理解できるように説明や手助けを行うこともとても重要です。

定期検診を受けてメンテナンスを継続する

インプラントも天然歯も、定期的にメンテナンスを受けることが大切です。これにより、口腔内のあらゆる病気の早期発見・早期治療につながり、口腔内のフレイルを予防することができます。
また、歯周病などが心筋梗塞、脳血管疾患、認知症、糖尿病といった全身疾患の予防にも関係していることがわかってきています。現在では、歯科の定期健診や歯のメンテナンスは命を守る大切なものといえるでしょう。

歯科医院でのインプラントのメンテナンスはどんなことをする?

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インプラントや入れ歯に関するご相談など、さまざまな口腔内のお悩みを一人ひとり丁寧に診断し、ご説明いたします。
費用のことや、インプラントに対する不安からなかなか踏み切れずに我慢している方も、どうぞお気軽にご相談ください。
検査・診断から治療法の選択、費用の説明まで、できるだけわかりやすく丁寧に対応いたしますので、安心してお越しください。

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この記事を監修した歯科医師

堀尾 愼一郎 森都心歯科クリニック 院長